代表理事
清水悦郎 東京海洋大学 学術研究院 海洋電子機械工学部門 教授

「マーケットがないなら自分たちで作るしかない!」

 東京海洋大学では2009年から電池推進船プロジェクトを開始し、約十年にわたりこのような意識で活動してきた。電池推進船に試乗された方には概ね好評ではあったが、現実の導入には至らない。その理由は、「初期コストが高い」、「利用するためのインフラが整っていない」ということに尽きる。さらに自動運航技術を導入し、安全性向上、運用コストの削減も含めた検討も行っているが、こちらは法規制面もあわせて検討しなければならず、大学だけの検討では実用化に向けて前進しないということを実感した。

 そこで、単に船舶を運航する会社に頼るのではなく、社会インフラの一環、日常の移動・輸送手段となるとともに災害時においても有用に活用できるモビリティ・インフラとして整備することが良いのではないか、と考えた。そのためには、単に技術開発を行うだけではなく、法規制面も含めた社会の仕組み全般を把握したうえで社会実装させ、多くの人々が恩恵を受けられるようにする必要がある。

 世の中全体を俯瞰し日本として在るべき姿を考え、社会の仕組みから作り上げるためには公平中立な立場が必要である。時には現実的ではないと感じられるような提案をしても受け入れてもらいやすい大学教員が理想を語ることも重要であると考えた。これまであまり注目されてこなかった水域利用という観点から在るべき姿を語り、賛同してくださる方々を集め理想を実現させたい。これが、一般社団法人ウォーター・スマート・レジリエンス研究協会を設立するに至った経緯である。

理事
横内 憲久 日本大学理工学部 まちづくり工学科 名誉教授

WSROの“まちづくり”

われわれが“まちづくり”というと人間や暮らしが関わってくる。ということになると、まちづくりは短中期の都市問題等の解決に向かわせないと、都市に大きな貢献は得られない。

例えば、最近トヨタが、富士山麓に新テクノロジーの実証都市(スマートシティ)をつくり、まちの生活の中で自動車のあり方、将来の可能性を探る壮大な計画を公表した。

つまり、自動車単独の技術(技術オリエンテッド)だけでは、自動車が将来の生活を担えないと捉えている。 WSROで“まちづくり”というときにも、単に自動運航船等が何に使えるというよりも、喫緊の都市問題や都市生活(少子高齢化、防災、コミュニティ等)の解決にどう活用できるかを考え、示唆を与えなければならない。